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パニックの波が、収まる事はなかった。
パニックの嵐は、大きな津波の様に何度も何度もやってきては、僕を死の恐怖におとしいれ、飲み干していった。
自宅のベッドに倒れ込んだ。携帯をポケットから取り出し、なんとか、ホメオパスのパトリシアのオフィスにポイスメールを残した。「大至急連絡を下さい」と。
しばらくすると、携帯の着信音が鳴った。
パトリシアだと思い、ベッドに横たわったまま、電話に出ると病院の薬剤師だった。
中国系の薬剤師は、「なぜ勝手に病院を抜け出すんだ!」「大切な薬だから、いますぐに病院に取りに来い!!」と大声でがなりたてていた。
僕は、もう既に限界をとっくに超えている。返事をせずに携帯を切る。
すぐに、また電話がかかってきた。「今スグに取りに来い!」
僕は、携帯からバッテリーを抜き取り、バラバラにして、ベッドの下に放り投げた。
病気を治療する為に、薬を服用する気なんて、全く無い。
今、思うと日本の病院とドクター、薬漬けの治療に対する不審が吹き出したのだと思う。
生きているのか死んでいるのか分からない状態の夫に、妻は心配を通り越し呆れ顔だった。
僕のパニック障害は、全くもって酷いものだった。
理由もなく、不安がやってきて、死の恐怖がやってくる。
その「死」の恐怖はとてもリアルで、ビルの屋上から飛び降りる様なものだった。
いや、自分の脳の中では、実際にビルの屋上から飛び降りているのだ。
パニックの嵐が通り過ぎると、ショックの為、「感情」がすべてなり、うつ状態になる。
2日ぶりの自宅での、夕食に、妻とのコミュニケーションをとろうとするが、言葉が全くででない。
まるで、心の檻に閉じ込められている様なのだ。心の中では、「誰か助けて!」とさけんでいるのだが、言葉が出ない、廃人とはこの事であろう。
あげくのはてに、自分の記憶が曖昧になってきた。一体自分は、誰なんだろう?と。
今思えば、いわゆる重度の鬱の患っている患者さんはこんな状態なのだと思うし、ある意味貴重な体験だった。
翌日、大声でがなり立てていた中国系の薬剤師の事が気になり、いつもの義務感から病院に薬を取りにいく事を決心した。
病院というシステムでは、治療後に薬をもらい、服用することが常識とされているだ。
それに、散歩する事でパニック障害が直るのではとの思いもあった。
今思うとやっと抜け出した病院に戻るのというのは、クレイジーな決断だった。
病院までは、徒歩で片道約30分。
その道のりは、まるで、素人が観客の前でサーカスの綱渡りをするかの様だった。少しでも動揺すれば、ロープは揺れ始め、その揺れは次第に大きくなり、奈落の底に落ちてしまう「リアルな死への恐怖」がそこにはあった。
気休めにウオークマンで、ロックをガンガン聞きながら、病院に向かった。
実際のところ、僕の足の乗ったロープは常に揺れていた。死の恐怖が常に底にあり、一歩足を踏み外せば、奈落の底に落ちてしまうのだ。
昨日まで、入院していた病棟の同じフロアにいってみると、昨日まであったはずの、区画が閉鎖されていた。
思いがない展開に、足元が震え始めた。必死の思いで、地下にある薬剤師の部署を見つけ、事情を話し、薬を調合をお願いした。
はやり、薬はすぐには準備されない。何か、無料で処方される胃潰瘍のクスリなので、時間がかかるようなのだ。
少し時間がかかるようなので、待つようと言われた。
足元のロープが大きく揺れ始めた。
パニック発作がでて、倒れてしまうと。病院に収監されてしまうかもしれない。
今すぐこの場から逃げ出したい、けれどもクスリを受け取らなければいけない。
クスリの準備ができるまで、揺れているロープの上で耐えなければならないのだ。
また、論理的な檻に入ってしまったのだ。
薬剤の窓口を何度もいったり来たりしながら、必死に耐えた。
クスリを受け取ると、薬剤師の人から「大切なクスリなのでかならず服用するように」と念を押された。
なんとか、自宅にたどり着いたが、極度の疲労に襲われていた。今の僕には外出をするという行為が不可能であるという事を証明した様なものだった。
胃潰瘍のクスリを服用するつもりはなかったが、かならず服用する様と言われたので、義務感から一錠飲んで見ることにした。
コップの水を一緒に飲み込んでスグに、パニック発作がやってきた。僕は、その場に倒れ込んだ。やれやれ、一体、何をしに、病院にいったのだろう。
パニック障害と伴にやってくる、「死」の恐怖は、手を変え品を変え、いろんなバリエーションで、僕の事を襲ってきた。
第12話へと続く
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”冗談だろう?人生って、ジョークだったのか?あまりの可笑しさに、僕は笑いがこ
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僕たちは、人生というドラマの傍観者だったんだ。でも、そこには愛が満ち溢
れている。いや、どこもかしこも、愛でギッチリ溢れているのだ。”
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