水平線の彼方に

「地平線の彼方へ」 浄化編(5)浮き上がる文字

* 

伝授を受けて、瞑想をしばらくした後、お茶を飲みながら先生と世間話をしていた。 

愛すべきロックの話とか、車の話とか、ワインの話などだ。 

もっとも、僕は、まだ体の震えが残っていたから、もっぱら聞き役だった。 

しばらくして、先生が「もう一度スモークヒーリングを受けられてはどうですか?」と言った。 

えっ?まさか?と思い僕は怖じ気づいた。 

ついさっき起こった出来事を思い出すだけで、身がすくむ思いだった。 

あまりにも怖かったので、少し考えさせて下さいと返事をした。 

「じゃあ、関さん、ゆっくり考えて下さい」と言い、先生はベランダに出て、自分で自分にスモークヒーリングを始めた。 

あの強烈なスモークヒーリングを自分で自分にするなんて、小林先生は、変態なのか? と本気で思った。 

もう一度、スモークヒーリングを受けた方が良いのだろうか?僕は悩んだ。 

日本に滞在している間にしか、ヒーリングを受けることは出来ない。 

僕は恐怖を感じていたが、自分の”ハート”は、スモークヒーリングを受けたいとメッセージを送っているのに気がついた。 

自分の”ハート”が欲しているのに、逆らうことはできない。 

その様に、小林先生に伝えた。 

2回目のスモーク・ヒーリングを受けると、1回目以上に大絶叫した。 

さながらそれは、”猛獣”そのものだった。 

スモークヒーリングの最中に、僕の身体の中にいる何者かは、先生の腕を払い除け激しく抵抗をした。 

そして、5回目のホーリブレスを受けると、 

絶叫が嗚咽へ代わり悲しみがこみ上げてきた。 

ヒーリングが終わると、その存在は「あ、り、が、と、う…」と何度も言いながら、先生にもたれかかる様にして、その場に崩れ落ちていった。 

浮かび上がる文字 

気分が落ち着くのにずいぶんと時間がかかった。 

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僕にとって、スモークヒーリングは、麻酔なしの外科手術の様だった。 

体力の限界まで絶叫したので、完全に疲労困憊していた。 

そして、恐怖の感覚がなかなか抜けなかった。 

それどころか、視界に何か文字が写り込んでいるのに気がついた。 

うっすらと、何であるかは分かった。 

でも、恐ろしすぎて先生に伝えることは出来なかった。 

何かの勘違いであればと祈っていた。 

一人で電車に乗り実家に帰宅するのが怖かった。 

先生は昔のバンド仲間と青山で落ち合う予定だったが、無理を言って山手線経由で新宿駅まで付き添ってもらうことにした。 

電車の窓越しから見える、東京の街はクリスマスのイルミネーションでキラキラと輝いていた。 

山手線の車内とスモークヒーリングで起こったこと。 

その2つの世界は、あまりにもかけ離れ、そのギャップに僕は茫然としていた。 

先生は、そんな僕には、おかまいもなく地元にある美味しいお好み焼きの店の話を嬉しそうにしていた。 

先生とは新宿駅で別れた。 

一時間ほど電車に揺られ、東京郊外にある実家の最寄り駅に到着した。 

時刻は午後6時過ぎ、帰路を急ぐ大勢の人々が改札口へ吸い込まれていく。 

突然、何の前触れもなく、スモークヒーリングの時に感じていた文字がハッキリと視界の中に浮かび上がってきた。 

意外というか、やはりと思えるものだった。 

その文字は、朱色で書かれ、 

”呪念”と浮かび上がっていた。 

嘘だろう?! 

僕は首を振りながら、あたりを見回す。 

それでも、”呪念”の2文字が僕の視界から消えることはなかった。 

僕は、呪われているのだろうか?? 恐怖のあまり、身もすくむ思いだった。 

瞑想を始めた時に聞こえてきた言葉「一族を忘れるな・・」を思い出した。 

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